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2005.4.1
「フールB」が近づいている。
新ネタ制作中の私は、
お産の前の母犬よろしく、
いやさ冬眠明けの熊のごとく、
どこかぼうっとしながらも、気が荒い。
というか、感じが悪い。
熊で思い出したが。
子供の頃に読んだ本で、
深山のクマの留守宅に、一人の女の子があがりこみ、
勝手にスープを飲み、椅子を壊し、
あげく家人のベッドで寝ていたリする話があったように記憶している。
あ、クマは複数いたような気がしてきた。
おそらく大中小3匹。
こういうときは大抵3匹だからな。
徐々に思い出してきたが、たしか女の子は、
皿に入ったスープを、これは熱いのぬるいの言って、適温のやつのみを飲み干し、
椅子にもさんざんいちゃもんをつけ、結果一番小さいやつかなんかを壊してしまったような。
思い出すにつれ、私はこの女の子に腹が立ってきた。
まず、道に迷って腹減ってんだったら、なんでも美味しくいただけよ、と思う。
そして、食べ物の選り好みをする余裕がありながら、
人の物を壊しておいて、「あ、やっちゃった」的ノリ。
修復を試みようともせず惰眠を貪る女の子に、
(はっきりそうだったかどうかは忘れたが)
憎しみすら覚える。
目が覚めても、目やにを取りながら、「ねー朝ご飯まだ?」とでも口走りかねんやつだ。
だから、帰ってきたクマたちが、寝ている女の子にびっくりしただけで、
むしろなんとなく押され気味なムードだったことを思い出し、がっかりした。
「クマよ、怒れ」 と思った。
「せめて、謝らせろ」 と。
が、子供の頃の私は、
逆にこの波風立たない結末に、深く安堵したように記憶している。
やはり、クマが本気になってしまうと、両者には力の差がありすぎることを知っていたからだろう。
大人だな。
なるほど。
強いやつは、そんな小さなことでガタガタ言ったりはせぬものなのだ。
が、女の子が去った後、
大きいクマは、ほかの2匹に、「荷物をまとめろ」 と言うだろう。
「出発だ」 と。
あの女の子の無邪気な口は、クマの住み処を村人たちに伝えるだろう。
そしてマタギがやってくるのは時間の問題だろう。
だがもしかしたら、2匹は残ると言うのかもしれない。
「ぼくら、人間とうまくやってく自信あるし」 「ここ好きだし」 「あの子みたいな服も着てみたいし」
「そうか」 大きいクマは言う。 「がんばれよ。 無事を祈る」
そして大きいクマは、愛用の椅子も、皿に入ったスープもそのままに、
本当に大事なものだけを持って、住みなれた家を、一人、後にするだろう。
かっこいい。
しかし実は、この話を最初に思い出したとき、
私は女の子とクマの役割を逆だと思っていた。
つまり、お腹を空かせたクマが民家に侵入し、
スープを飲んだり、椅子を壊したりする様を想像していた。
そこへ女の子が帰ってきて。
しかしそれだと、たしかにシャレにならん状況だな。
そしてこの話、やっぱりフールBと全く関係ないな。
あるかと思ったんだけど。